日本を代表する山である富士山の麓には貴重な蝶が多く生息します。
富士山麓には、昔の火山活動により他の場所では見られない独特の草原環境が広がっています。この環境に適応している草原性の蝶を多く観察することができます。草原性の蝶は、草原環境の消滅とともに全国的に数を減らしており、この富士山麓で観察できる草原性の蝶は全国的に見ても貴重な蝶が多く含まれています。
この記事では、これまでに富士山麓で観察した蝶を紹介します。
富士山麓の本栖高原・梨が原の環境

本栖高原と梨が原はともに富士山麓に位置し、草原の環境が維持されています。富士山には”高山蝶”は1種類も生息していませんが、クロシジミやゴマシジミ、ヤマキチョウ、ヒメシロチョウなど、全国的にも非常に貴重な草原性の蝶が多く生息しています。
特に梨が原で見られる本州中部亜種のゴマシジミは、いわゆる種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)で指定されている極めて絶滅の可能性が高い種となります。環境省レッドリスト2020においても、絶滅危惧IA類(CR)に分類されており、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」とされています。
現在の富士山の草原の環境は、火入れ(山焼き)などにより人為的に残されており、人の手が入らなくなれば森林となり、現在の環境は消滅してしまうと言われています。
2022年7月17日に富士山麓で観察した蝶の写真
2022年7月に富士山麓に蝶の観察に行きました。キマダラモドキやホシチャバネセセリなどの貴重な蝶が観察できた一方で、クロシジミは観察することができませんでした。
ミヤカマラスシジミ(梨が原、本栖高原)


ミヤマカラスシジミは本栖高原では比較的よく見る蝶です。この日は梨が原でも観察することができました。まだ時期が少し早かったのか、これまでと比較すると数はそれほど多くありませんでした。
キマダラモドキ(梨が原)

キマダラモドキは梨ケ原で見られます。2014年に続き、2回連続で観察することができました。
ホシチャバネセセリ(本栖高原)

ホシチャバネセセリは全国的に減少が著しく、なかなか見られない蝶ですが、本栖高原には比較的多くの数が生息しています。この日も多くのホシチャバネセセリを観察することができました。非常に小さいサイズのセセリチョウで、俊敏に飛ぶので、追いかけるのは大変ですが、よく花に吸蜜に来ますので撮影はそれほど難しくはありません。
2009年~2014年に富士山麓で観察した蝶の写真
以下では2009年7月26日、2010年7月24日、2014年8月24日の3日間で本栖高原と梨が原で観察した代表的な蝶の写真を掲載します。
クロシジミ(本栖高原など)
まずは本栖高原などで観察できるクロシジミです。
クロシジミは環境省レッドリスト2020で絶滅危惧IB類(EN)に分類され、「ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」とされている貴重な蝶です。
これまでには、この場所以外に、三重県の鈴鹿山脈の石榑峠周辺で本種を観察しています。

ミヤマカラスシジミ(本栖高原)
ミヤマカラスシジミは本栖高原で多く観察できます。
環境省レッドリスト2020には記載がありませんが、どこでも見られる蝶ではないので写真を掲載しました。

ヤマキチョウ(本栖高原)
本栖高原ではヤマキチョウも観察することができます。
ヤマキチョウは環境省レッドリスト2020で絶滅危惧IB類(EN)に分類されており、「ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」とされている貴重な蝶です。
この時は、ご一緒させていただいた方がヤマキチョウを捕獲したため、その写真を撮らせていただきました。

ゴマシジミ(梨が原)
次に梨が原で観察できるゴマシジミです。
上にも記載しましたが、梨が原で見られる本州中部亜種のゴマシジミは、いわゆる種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)で指定されている極めて絶滅の可能性が高い種となります。環境省レッドリスト2020においても、絶滅危惧IA類(CR)に分類されており、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」とされています。

ヒメシロチョウ(梨が原)
ヒメシロチョウは梨が原で多く生息しています。
ヒメシロチョウはクロシジミと同様に環境省レッドリスト2020で絶滅危惧IB類(EN)に分類され、「ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」とされている貴重な蝶です。

キマダラモドキ(梨が原)
キマダラモドキも梨が原に生息する貴重な蝶の1種です。
こちらは環境省レッドリスト2020で準絶滅危惧(NT)に分類され、「現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種」とされています。
地味な蝶(?)ですが、生息地は局地的ですので、どこでも見られる蝶ではありません。

ホシチャバネセセリ(本栖高原と梨が原)
ホシチャバネセセリもキマダラモドキと同様に環境省レッドリスト2020で準絶滅危惧(NT)に分類され、「現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種」とされています。
私自身はこれまでにこの本栖高原と梨が原以外で観察ができていない蝶です。

2009年~2014年に富士山麓で観察した蝶のリスト
2009年7月26日、2010年7月24日、2014年8月24日の3日間で、以下の蝶を観察することができました。興味のある方は是非足を運んでみてください。
種 | 年 | 月 | 日 | 都道府県 | 区市町村 |
ナミアゲハ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
クロシジミ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
クロシジミ | 2009 | 7 | 26 | 静岡県 | 富士宮市 |
クロシジミ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ゴマシジミ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 富士吉田市、山中湖村、忍野村 |
ゴマシジミ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 富士吉田市、山中湖村、忍野村 |
ミヤマカラスシジミ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ミヤマカラスシジミ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ミヤマカラスシジミ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ヒメシロチョウ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 富士吉田市、山中湖村、忍野村 |
ヤマキチョウ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ウラギンスジヒョウモン | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 本栖 |
ウラギンスジヒョウモン | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ウラギンヒョウモン | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ウラギンヒョウモン | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
オオウラギンスジヒョウモン | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
キマダラモドキ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 富士吉田市、山中湖村、忍野村 |
ジャノメチョウ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ジャノメチョウ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ヒメウラナミジャノメ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ヒョウモンチョウ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ホシミスジ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
メスグロヒョウモン | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 富士吉田市、山中湖村、忍野村 |
コキマダラセセリ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
コチャバネセセリ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ホシチャバネセセリ | 2009 | 7 | 26 | 山梨県 | 山中湖村 |
ホシチャバネセセリ | 2010 | 7 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ホソバセセリ | 2014 | 8 | 24 | 山梨県 | 南都留郡富士河口湖町 |
ミヤマチャバネセセリ | 2009 | 7 | 26 | 静岡県 | 富士宮市 |
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