茨城県の”珍しい蝶”と”絶滅した蝶”を紹介~茨城県版レッドリスト2016年改訂版より~

蝶の生態他
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茨城県は筑波山をはじめ、ある程度自然が残っている県ですが、特に県南では開発が進み昆虫は数を減らしています。

茨城県では、希少野生生物のおかれている現状と保護の大切さについて理解を深めるために茨城県版レッドリスト・レッドデータブックを公表しています。それによると、茨城県内では2種類の蝶が絶滅しているほか、5種類が絶滅危惧ⅠA類に、9種類が絶滅危惧ⅠA類に分類されています。

この記事では絶滅した蝶、絶滅の危機に瀕する蝶を紹介します。

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茨城県で絶滅した2種類の蝶

オオウラギンヒョウモン

分布九州以外のほとんどの地域で絶滅
生息環境草原
発生回数九州では年2回
成虫が見られる時期6月頃から9月頃まで
越冬の状態幼虫で越冬
食草スミレ科の植物
亜種なし

かつては本州や四国、九州に分布していて、ウラギンヒョウモンよりも普通に見られることもある蝶でしたが、現在では九州以外のほとんどの地域で絶滅してしまいました。日本で最も減少した蝶と言われています。

オオウラギンヒョウモンは草刈りを定期的に行っている草原環境に生息していますが、開発や管理放棄により環境が変わり、大きく減少したと考えられています。

ヒョウモンモドキ

分布広島県の一部
生息環境草原・湿地
発生回数年1回
成虫が見られる時期6月頃
越冬の状態幼虫で越冬
食草キク科の植物
亜種なし

ヒョウモンモドキは本州の特産種で北海道や四国、九州には生息しません。かつては関東地方や中部地方などにも生息していましたが、本種の生息環境である草原や湿地が開発や管理放棄により減少し、現在では広島県の一部にしか生息していません。広島県では継続して保全活動が行われています。

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茨城県で絶滅危惧ⅠA類の5種類の蝶

ウスバシロチョウ

2015年6月13日栃木県日光市のウスバシロチョウ
分布北海道・本州・四国
生息環境平地・山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期4月頃から6月頃まで
越冬の状態卵で越冬
食草ムラサキケマンなどのケマンソウ科の植物
亜種なし

ウスバシロチョウはウスバアゲハとも呼ばれ、アゲハチョウ科に分類される蝶です。緩やかに滑空するように飛翔し、花をよく訪れます。成虫は暖地では4月から5月頃に見られ、寒冷地では6月頃まで見られます。都市部では生息数は多くはありませんが、全国的には比較的よく見られる蝶です。

北海道、本州、四国に生息していますが、九州や沖縄には生息していません。本州や四国ではウスバシロチョウに見た目が似た種は生息していませんが、北海道ではヒメウスバシロチョウ(別名ヒメウスバアゲハ)が生息しており、見た目が非常に良く似ているため、同定には注意が必要です。

ヒメシロチョウ

2009年7月18日山梨県忍野村のヒメシロチョウ
分布北海道、本州、九州
生息環境平地、山地
発生回数年3回程度
成虫が見られる時期4月から9月頃まで
越冬の状態蛹で越冬
食草ツルフジバカマなど
亜種なし

ヒメシロチョウは北海道、本州、九州に生息しています。生息地は局地的で、草地環境の悪化により絶滅した地域もあり、全国的に絶滅が危惧されています。成虫は年3回程度の発生で、第1化は4月頃から羽化し、第3化が9月頃まで見られます。

日中に活発に活動し、草地の周辺を緩やかに飛翔します。モンシロチョウと比較すると小さく、飛翔も緩やかであることから、飛翔中でも見分けることができます。北海道に生息するエゾヒメシロチョウとは見た目が非常に良く似ており、生息地が重なることもあるため、同定には注意が必要です。

カラスシジミ

2010年8月13日長野県乗鞍高原のカラスシジミ
分布北海道、本州、四国、九州
生息環境山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期6月から7月頃
越冬の状態卵で越冬
食草ハルニレ、スモモなど
亜種なし

カラスシジミは成虫が年に1回発生し、6月から7月頃に見られます。北海道では平地から山地にかけて比較的良く見られます。本州以南では主に山地に生息します。日中は休んでいることが多く、主に夕方に活発に活動します。飛び方はとても俊敏で、栗の花やヒメジョオンの花などの蜜を吸います。

幼虫はハルニレやコブニレなどのニレ科のはを食べますが、スモモなどのバラ科の植物の葉を食べることもあります。

見た目が似た種として、日本にはベニモンカラスシジミとミヤマカラスシジミが生息します。

クロシジミ

2010年7月24日山梨県富士河口湖町のクロシジミ
分布本州、四国、九州
生息環境平地、山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期7月から8月頃
越冬の状態幼虫で越冬
食草クヌギ、コナラなど
亜種なし

クロシジミは生息数が激減し、生息地が局地的となっており、現在は絶滅が危惧される蝶の1種です。成虫は1年に1回の発生で、7月から8月頃に見られます。日中、オスは草原の上を俊敏に飛翔して、メスは低い場所をゆっくりと飛びます。ヒメジョオンなどの花の蜜を良く吸う姿が見られます。

キバネセセリ

2018年7月16日栃木県日光市のキバネセセリ
分布北海道・本州・四国・九州
生息環境山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期7月頃から8月頃まで
越冬の状態幼虫で越冬
食草ハリギリ
亜種なし

キバネセセリは北海道から九州まで広く日本に分布します。北海道や本州の東北から中部地方では比較的よく見られますが、それ以外の地域では個体数の減少が著しく、観察できる機会は限られます。

成虫は年1階の発生で、7月頃から8月頃まで見られます。主に山地に生息し、♂は地面で吸水したり、獣糞の汁を吸う姿がよく見られます。♀は花の蜜をよく吸います。

日本にはキバネセセリと同じ亜科としてアオバセセリ、オキナワビロウドセセリ、テツイロビロウドセセリの4種類が生息していますが、見た目が似ているわけではないため、キバネセセリを見分けるのは容易です。

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茨城県で絶滅危惧ⅠB類の9種類の蝶

チャマダラセセリ

分布北海道、本州、四国
生息環境草原
発生回数年2回
成虫が見られる時期5月頃と8月頃
越冬の状態蛹で越冬
食草バラ科の植物
亜種なし

チャマダラセセリは丘陵地や山地の草原環境に生息する蝶で、5月頃と8月頃に見られます。生息に適した環境が管理放棄により失われ、全国的に減少が著しい蝶です。現在はその姿はほとんど見られなくなり、ごく限られた場所にのみ生息する蝶となってしまいました。

ホシチャバネセセリ

2009年7月26日山梨県富士河口湖町のホシチャバネセセリ
分布本州・対馬
生息環境山地の草原
発生回数年1回程度
成虫が見られる時期7月頃から8月頃まで
越冬の状態幼虫で越冬
食草オオアブラススキなどのイネ科の植物
亜種なし

ホシチャバネセセリは年1回の発生で、7月から8月頃に成虫が見られます。山地の草原などに生息しますが、個体数の減少が著しく、絶滅した場所も多くあります。日本では本州と対馬に生息し、本州では青森県から山口県まで分布は広いのですが、生息地は局地的です。生息地は残りわずかとなっている貴重な蝶です。

小さい種類が多いセセリチョウ科の蝶の中でもひときわ小さく、すぐに見失ってしまいます。花をよく訪れ、花の蜜をよく吸います。

スジボソヤマキチョウ

2015年7月25日長野県南牧村のスジボソヤマキチョウ
分布本州、四国、九州
生息環境山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期ほぼ周年
越冬の状態成虫で越冬
食草クロウメモドキ、クロツバラなど
亜種なし

スジボソヤマキチョウは、本州から九州まで広く日本に分布します。主に山地に生息し、平地ではあまり見られません。成虫は年1回の発生で、6月頃から羽化しはじめ、短い期間活動したあと夏眠に入り秋にまた活動を再開します。

活動時間は主に日中で、緩やかに飛翔し、花の蜜を吸うほか、地面から吸水する姿も見られます。

近縁種のヤマキチョウと見た目がよく似ますが、ヤマキチョウは生息環境の悪化により個体数が激減しているのに対して、スジボソヤマキチョウは山地では比較的よく見られます。

ツマグロキチョウ

2009年9月11日栃木県さくら市のツマグロキチョウ
分布本州、四国、九州
生息環境平地、山地
発生回数年3~4回
成虫が見られる時期ほぼ周年
越冬の状態成虫で越冬
食草カワラケツメイ、アレチケツメイなど
亜種なし

ツマグロキチョウは本州、四国、九州に生息します。かつては普通に見られた蝶ですが、環境悪化により生息数が減少し、現在は絶滅が危惧される蝶です。成虫は年3~4回程度発生し、第1化(夏型)は5月頃から発生し始めます。

キタキチョウと見た目がよく似ており、分布も重なることがあるため、同定には注意が必要です。特に夏型は見た目がよく似ます。

ウラジロミドリシジミ

2016年7月8日青森県つがる市のウラジロミドリシジミ
分布北海道、本州、四国、九州
生息環境平地、山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期6月から7月頃
越冬の状態卵で越冬
食草カシワ、ナラガシワ
亜種なし

ウラジロミドリシジミは北海道から九州まで広い範囲に生息する蝶で、成虫は年1回の発生で、6月から7月頃に見られます。ウラジロミドリシジミの幼虫はカシワやナラガシワを食樹としますので、カシワ林に生息しています。

オスは夕暮れ時に活動しますが、オスとメスともに日中は不活発で、葉の上に静止していることが多いです。

ウラジロミドリシジミはゼフィルスと呼ばれるシジミチョウ科の1群の中の1種です。

ハヤシミドリシジミ

2017年7月8日福島県猪苗代町のハヤシミドリシジミ
分布北海道、本州、九州
生息環境山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期6月から8月頃
越冬の状態卵で越冬
食草カシワ
亜種なし

ハヤシミドリシジミは、ゼフィルスと呼ばれるシジミチョウ科の1群の中の1種で、オスは翅の表面が青色に輝く非常に美しい蝶です。成虫は年1回の発生で、6月から8月頃に見られます。ハヤシミドリシジミはの幼虫はカシワの葉しか食べないため、カシワ林に生息しています。

オスは夕方ごろに積極的に活動し、16時から19時頃が活動のピークとなり、カシワ林の周辺を活発に飛び回ります。メスは基本的に不活発で、カシワの葉付近でじっと止まっていることが多いです。

ヒメシジミ

ヒメシジミ
分布北海道、本州、九州
生息環境草原
発生回数年1回程度
成虫が見られる時期6月から7月頃
越冬の状態卵で越冬
食草オオヨモギなど
亜種北海道亜種、本州・九州亜種

ヒメシジミは北海道と本州、九州に生息する蝶で、四国や沖縄には生息していません。北海道では平地でも見られますが、本州では比較的標高の高い草原に生息する蝶です。草原の環境の悪化により絶滅してしまった場所も少なくありません。

ヒメシジミは産地による個体差が大きい蝶で、北海道に生息する亜種と、本州や九州に生息する亜種の2種類の亜種に分類されます。また、同じ地域に生息するものでも個体差が大きいです。

見た目がよく似た種として、ミヤマシジミとアサマシジミがいますが、この3種の中ではヒメシジミが最も小型です。また、ミヤマシジミはヒメシジミと比較すると標高が低い河川敷などにに生息するため、生息環境でも概ね見分けることができます。

ミヤマカラスシジミ

ミヤマカラスシジミ
分布北海道、本州、四国、九州
生息環境山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期7月中旬から8月頃
越冬の状態卵で越冬
食草コバノクロウメモドキ、クロツバラなど
亜種なし

ミヤマカラスシジミは主に低山地から山地に生息する日本固有の蝶です。成虫は7月中旬ごろから8月ごろまで見られ、年1回の発生です。北海道から九州まで広く分布し、場所によっては非常に多くの個体を観察することができます。ミヤマカラスシジミのオスは午後に活発に活動し、俊敏に飛んではよく花に止まります。

ムモンアカシジミ

ムモンアカシジミ
分布北海道、本州(局地的)
生息環境山地
発生回数年1回
成虫が見られる時期オスは7月中旬から8月頃。メスは9月頃まで見られる。
越冬の状態卵で越冬
食草クヌギ、カシワ、ブナなど。終齢幼虫はアブラムシなどを食べる半肉食性。
亜種なし

ムモンアカシジミはゼフィルスの1種で、その名の通り、紋が無いアカシジミです。近縁種のアカシジミやウラナミアカシジミは、オスの活動時間が夕暮れ時なのに対して、ムモンアカシジミは正午前後に活動します。メスは飛ぶことが少なく、下草などでじっとしていることが多いです。

ムモンアカシジミの幼虫はアブラムシなどを食べる半肉食性であり、特殊な生態を持つことから生息域が局地的で、簡単に観察できる蝶ではありません。

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