【日本の珍しい蝶】環境省レッドリスト2020に掲載された絶滅危惧種!オガサワラシジミは絶滅?

蝶の生態他
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2020年3月27日に、環境省から環境省レッドリスト2020が発表されました。環境省レッドリスト2020について、HPでは以下のように紹介されています。

環境省では、平成24年度に第4次レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を取りまとめており、平成27年度から、生息状況の悪化等によりカテゴリー(ランク)の再検討が必要な種について、時期を定めず必要に応じて個別に改訂することとしています。今回、第4次レッドリストの第5回目の改訂版として、環境省レッドリスト2020を作成しましたのでお知らせします。レッドリスト2020において、74種についてカテゴリーを見直したところ、絶滅危惧種が40種増加し、合計3,716種となりました。また、上記74種について随時見直しの評価理由や生息状況等を解説した「環境省レッドリスト2020補遺資料」を作成しました。

環境省HP:https://www.env.go.jp/press/107905.html

環境省レッドリスト2020は蝶だけでなく、あらゆる動物・昆虫などが対象となっていますが、この記事では、その中で絶滅危惧種に選定されている蝶と、絶滅したと考えられるオガサワラシジミを紹介します。

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日本の絶滅危惧種の蝶のリスト

絶滅危惧IA類(CR)17種

絶滅危惧IA類(CR)は、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」と定義されていて、以下17種類が選定されています。

  • タカネキマダラセセリ赤石山脈亜種
  • ヒメチャマダラセセリ
  • タイワンモンシロチョウ対馬・朝鮮半島亜種
  • ウスイロオナガシジミ鹿児島県栗野岳亜種
  • オガサワラシジミ
  • タイワンツバメシジミ名義タイプ亜種, 琉球亜種
  • カシワアカシジミ(キタアカシジミ)冠高原亜種
  • ゴマシジミ関東・中部亜種
  • ツシマウラボシシジミ
  • アサマシジミ北海道亜種
  • ゴイシツバメシジミ
  • オオルリシジミ本州亜種
  • ヒメヒカゲ長野県・群馬県亜種
  • オオウラギンヒョウモン
  • ウスイロヒョウモンモドキ
  • ヒョウモンモドキ
  • タカネヒカゲ八ヶ岳亜種

絶滅危惧IB類(EN)18種

絶滅危惧IB類(EN)は「ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」と定義されていて、以下18種類が選定されています。

  • ホシチャバネセセリ
  • アカセセリ
  • オガサワラセセリ
  • チャマダラセセリ
  • ミヤマシロチョウ
  • ツマグロキチョウ
  • ヤマキチョウ
  • ヒメシロチョウ
  • タイワンツバメシジミ日本本土亜種
  • クロシジミ
  • ゴマシジミ中国地方・九州亜種
  • ミヤマシジミ
  • アサマシジミ本州亜種
  • オオルリシジミ九州亜種
  • シルビアシジミ
  • ヒメヒカゲ本州中部・近畿・中国地方亜種
  • クロヒカゲモドキ
  • コヒョウモンモドキ

絶滅危惧II類(VU)15種

絶滅危惧II類(VU)は「絶滅の危険が増大している種」と定義されていて、以下15種が選定されています。

  • アサヒナキマダラセセリ
  • ヒメイチモンジセセリ
  • ギフチョウ
  • クモマツマキチョウ八ヶ岳・南アルプス亜種
  • チョウセンアカシジミ
  • カシワアカシジミ(キタアカシジミ)名義タイプ亜種, 北海道・東北地方亜種
  • ルーミスシジミ
  • ゴマシジミ中部高地帯亜種
  • アサマシジミ本州高地亜種
  • ハマヤマトシジミ
  • ウラギンスジヒョウモン
  • ヒョウモンチョウ本州中部亜種
  • ツマジロウラジャノメ四国亜種
  • オオイチモンジ
  • ウラナミジャノメ日本本土亜種

準絶滅危惧(NT)42種

準絶滅危惧(NT)は「現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種」と定義されていて、以下42種が選定されています。

  • タカネキマダラセセリ飛騨山脈亜種
  • ギンイチモンジセセリ
  • スジグロチャバネセセリ愛媛亜種
  • スジグロチャバネセセリ名義タイプ亜種
  • ヒメギフチョウ本州亜種
  • ヒメギフチョウ北海道亜種
  • ウスバキチョウ
  • クモマツマキチョウ北アルプス・戸隠亜種
  • ミヤマモンキチョウ浅間連山亜種
  • ミヤマモンキチョウ北アルプス亜種
  • イワカワシジミ
  • ベニモンカラスシジミ名義タイプ亜種, 四国亜種
  • ベニモンカラスシジミ中国地方亜種
  • ベニモンカラスシジミ中部地方亜種
  • カバイロシジミ
  • オオゴマシジミ
  • ゴマシジミ北海道・東北亜種
  • リュウキュウウラボシシジミ
  • ヒメシジミ本州・九州亜種
  • キマダラルリツバメ
  • クロツバメシジミ九州沿岸・朝鮮半島亜種
  • クロツバメシジミ東日本亜種
  • クロツバメシジミ中国地方・四国・九州内陸亜種
  • カラフトルリシジミ
  • ヒョウモンチョウ北海道・本州北部亜種
  • アサヒヒョウモン
  • カラフトヒョウモン
  • シロオビヒメヒカゲ北海道西部亜種
  • クモマベニヒカゲ北海道亜種
  • クモマベニヒカゲ本州亜種
  • ベニヒカゲ本州亜種
  • アカボシゴマダラ奄美亜種
  • コノハチョウ
  • キマダラモドキ
  • シロオビヒカゲ
  • ダイセツタカネヒカゲ
  • タカネヒカゲ飛騨山脈亜種
  • フタオチョウ
  • オオムラサキ
  • マサキウラナミジャノメ
  • リュウキュウウラナミジャノメ
  • ヤエヤマウラナミジャノメ
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春先(4月頃)に観察できる絶滅危惧種の蝶の紹介

蝶のシーズンが始まる春に観察できる珍しい蝶を知りたい!

環境省レッドリスト2020に掲載されている蝶の中で、主に本州で春に観察できる蝶を抽出しました。

ギフチョウ(絶滅危惧II類(VU))

2016年5月7日長野県白馬村のギフチョウ

ギフチョウは春先の4月から5月頃にだけ見られる蝶で、”春の妖精”と呼ばれることがある蝶です。以前は東京にも生息していましたが、現在は全国的に数を減らしており、絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。

クロツバメシジミ(準絶滅危惧(NT))

2017年8月5日に長野県豊丘村で観察したクロツバメシジミ

クロツバメシジミは準絶滅危惧に分類されているシジミチョウ科の蝶で、4月頃から観察することができます。クロツバメシジミの幼虫はツメレンゲなどの多肉植物を食草とするので、こういった植物が生えている河川敷や露岩地で見ることができます。生息地は極めて局地的なので、ある程度事前に生息場所を調べていかないと、なかなか見ることができません。

シルビアシジミ(絶滅危惧IB類(EN))

2015年8月29日に兵庫県伊丹市で観察したシルビアシジミ

シルビアシジミは絶滅危惧IB類に分類されているシジミチョウ科の蝶で、4月頃から観察することができます。シルビアシジミの幼虫はミヤコグサなどのマメ科の植物を食草として、河川敷や草原、農地などに生息していますが、近年の環境悪化により生息数が激減しています。

一方で、伊丹空港近くの猪名川河川敷では、シロツメクサに食性を転換したシルビアシジミが生息しており、この場所では多くのシルビアシジミを観察することができます。

ツマグロキチョウ(絶滅危惧IB類(EN))

2009年8月17日に静岡県浜松市で観察したツマグロキチョウ

ツマグロキチョウは絶滅危惧IB類に分類されるシロチョウ科の蝶で、越冬するため冬でも成虫を見ることができる蝶です。主に河川敷や草原に生息する蝶で、かつては普通に見られた種でしたが、現在は局所的にしか生息していません。普通種であるキタキチョウと見た目が非常に良く似ており、共存して生息していることが多いため、良く見ないと判別が難しい場合が多いです。

チャマダラセセリ(絶滅危惧IB類(EN))

チャマダラセセリは全国的に数を減らしており、現在ではほとんど姿が見られなくなりました。生息場所を見つけるのは容易ではありませんが、4月下旬頃から成虫が見られる蝶です。

ギンイチモンジセセリ(準絶滅危惧(NT))

2009年9月11日に栃木県さくら市で観察したギンイチモンジセセリ

ギンイチモンジセセリは準絶滅危惧に分類されているセセリチョウ科の蝶で、4月頃から観察することができます。主に草原や河川敷に生息する蝶で、かつては広い範囲で観察することができましたが、環境変化により全国的に減少している蝶です。全国的に減少はしていますが、まだ埼玉や茨城などの首都圏周辺でも観察ができる蝶です。

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秋(9月以降)に観察できる絶滅危惧種の蝶の紹介

秋になると観察できる蝶が減ってくるけど、秋でも観察できる珍しい蝶を教えてほしい!

次に、環境省レッドリスト2020に掲載されている蝶の中で、主に本州で秋に観察できる蝶を抽出しました。

クロツバメシジミ(準絶滅危惧(NT))

2017年8月5日に長野県豊丘村で観察したクロツバメシジミ

上で紹介したクロツバメシジミは、春から秋にかけて長い期間見られる蝶です。11月頃まで飛び回るクロツバメシジミが見られます。

シルビアシジミ(絶滅危惧IB類(EN))

2015年8月29日に兵庫県伊丹市で観察したシルビアシジミ

上で紹介したシルビアシジミは春先だけでなく、秋にも見られます。

ミヤマシジミ(絶滅危惧IB類(EN))

2009年8月17日に静岡県浜松市で観察したミヤマシジミ

ミヤマシジミもシルビアシジミと同様に絶滅危惧IB類に分類されているシジミチョウ科の蝶で、11月上旬頃まで観察することができます。主に河川敷や草原などに生息する蝶で、近年は環境変化により減少傾向が著しい蝶です。

自分のこれまでの観察経験から、全国的に見ると生息地はかなり減っていますが、生息している場所にはそれなりの数生息している印象です。

ルーミスシジミ(絶滅危惧II類(VU))

ルーミスシジミは絶滅危惧II類に分類されるシジミチョウ科の蝶で、越冬するため年中観察することができる蝶です。主に山地に局所的に生息しており、関東地方では千葉県南房総の清澄山に生息しています。

ですが、この清澄山はヤマビルが生息しているということもあり、自分はまだ観察に行けていません。いつかは清澄山に行ってみようと考えています。

ツマグロキチョウ(絶滅危惧IB類(EN))

2009年8月17日に静岡県浜松市で観察したツマグロキチョウ

上で紹介したツマグロキチョウは秋にも観察することができます。主に河川敷や草原に生息する蝶です。

ウラナミジャノメ(絶滅危惧II類(VU))

ウラナミジャノメは絶滅危惧II類に分類されるタテハチョウ科の蝶で、10月上旬頃まで観察できる蝶です。草原や農地、河川敷に生息する蝶ですが、自分はまだ観察できていない蝶です。

ギンイチモンジセセリ(準絶滅危惧(NT))

2009年9月11日に栃木県さくら市で観察したギンイチモンジセセリ

上で紹介したギンイチモンジセセリは、秋にも観察することができます。

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オガサワラシジミ絶滅の可能性

2020年8月に蝶愛好家にとっては衝撃的なニュースが飛び込んできました。

それは、近年小笠原諸島の母島でのみ観察されていたオガサワラシジミが絶滅した可能性が高いというニュースです。環境省ホームページで以下の報道発表がされています。

国内希少野生動植物種・オガサワラシジミ(チョウの一種で小笠原諸島固有種)について、2020年8月下旬に飼育下の全ての個体が死亡し、繁殖が途絶えました。種の保存法に基づく保護増殖事業として実施している生息域外個体群が途絶えたのは初めてのことでした。

環境省ホームページ;https://www.env.go.jp/nature/post_145.html

オガサワラシジミとは

オガサワラシジミ( 画像引用:環境省ホームページ;https://www.env.go.jp/nature/post_145.html )

オガサワラシジミは、これまでに小笠原諸島、父島列島の弟島・兄島・父島、母島列島の母島・姉島で分布が記録されている蝶ですが、近年生息が確認できているのは母島のみです。かつては父島、母島に多数生息していましたが、父島では1980年代前半に激減し、1992年以降、生息が確認されていません。母島でも少数が確認されるのみで、2018年以降、確実な記録がなく、野生絶滅が危惧されています。

小型(全長12~15mm程度)のシジミチョウで、オスのほうがメスよりやや大きい蝶です。年に数回孵化し、冬期の個体数は少ないのですが、年間を通じて見ることができる蝶です。生息地は自然性の高い森林であり、成虫の活動時間については、朝から夕方までの日が差している時間帯です。幼虫の餌はクマツヅラ科のオオバシマムラサキ、クスノキ科のテリハコブガシ、コブガシなどです。

オガサワラシジミ絶滅の経緯

絶滅危惧種のオガサワラシジミについては、小笠原諸島で分布が記録されていますが、外来種のグリーンアノールの影響等により、1990 年代までに父島列島で姿を消し、近年、母島で見られるのみとなったため、関係機関、団体、専門家、地域住民等と、生息域内外での保全対策に取り組んできました。その一環で東京都多摩動物公園と環境省新宿御苑においてオガサワラシジミの累代飼育にも取り組んできましたが、2020年春から個体の有精卵率が急激に低下し、繁殖が困難となり、2020年8月 25 日に飼育していた全ての個体が死亡しました。

  • <保全対策の経緯>
  • 2005年:東京都が多摩動物公園において飼育下での繁殖の取組を開始
  • 2008年:種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定
  • 2009年:種の保存法に基づく保護増殖事業計画を策定。関係機関と連携しながら、生息状況の調査や外来種対策等の保全対策を開始
  • 2016年:多摩動物公園において、園内施設を使用した交尾に成功し方法を確立
  • 2017年:多摩動物公園において、1年以上の継続した累代飼育にはじめて成功
  • 2018年:公的機関による生息状況調査では母島において個体が確認されなくなる
  • 2019年 10 月:環境省が多摩動物公園から個体を譲り受け、新宿御苑で飼育下繁殖を開始
  • 2020年4月:多摩動物公園及び新宿御苑における有精卵率の顕著な低下
  • 2020年7月:新宿御苑において飼育していた全個体が死亡
  • 2020年7月、8月:母島において個体確認調査を行うが、確認なし
  • 2020年8月 25 日:全ての個体が死亡(多摩動物公園 20 世代目の幼虫)

オガサワラシジミ絶滅の原因

オガサワラシジミの生息を脅かす原因としては、主に以下の原因が考えられます。

  • 外来種のグリーンアノールによる捕食
  • 干ばつや台風による被害
  • 開発による影響
  • アカギ等外来植物の侵入による植生の変化
  • コレクターによる捕獲圧

また、東京都多摩動物公園と環境省新宿御苑におけるオガサワラシジミの繁殖途絶の原因としては、環境省ホームページによると「生息域外個体群において近親交配による遺伝的多様性の損失が確実に進行し、有害な遺伝子の蓄積(近交弱勢)によって繁殖途絶に至ったと考えられる。」とされています。

オガサワラシジミ絶滅まとめ

高度経済成長期に多くの生物が絶滅する中で、日本では絶滅した蝶はこれまでにいませんでした。もしオガサワラシジミが絶滅したとすると、日本の蝶で絶滅第1号ということになります。

現状としては、近年唯一生存が確認されていた母島でも2018年以降は記録がなく、野生でも絶滅している可能性は十分にあります。この大変残念な教訓を活かして、環境省はホームページで「種の保全全般に活かすべき教訓」として以下3点を挙げています。

(1)生息域内保全が重要であることを強く再認識する
(2)効果的な生息域外保全のあり方・手法を整理する
(3)保護増殖事業の目標の設定と共有、具体的な実施

日本産の蝶の絶滅第2号が生まれないため、この教訓を次に活かしていくことが重要です。

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